eN arts

LINES

グループ展

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LINES

リー・エドワーズ | 西村 涼 | 白子 勝之

2019年11月8日(金)- 12月1日(日)
会期中 金・土・日 12:00-18:00 開廊
オープニングレセプション:11月8日(金)18:00-20:00
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2019年11月、eN artsでは グループ展覧会「LINES」を開催致します。タイトルの「LINES」はイギリスの社会人類学者 Tim Ingold (ティム・インゴルド)教授著の “LINES: A Brief History by Tim Ingold (和訳:ラインズ:線の文化史)より引用しました。

インゴルドはカテゴライズされた狭義の文化人類学に留まらず、歩くこと、織ること、観察すること、物語ること、歌うこと、描くこと、書くこと・・・我々が生きていく中で行うことは全て「線」に沿って進んでいるということに着眼。人類学・考古学・建築学・芸術などの領域を「線」という共通項で考察することにより、それらの領域を縦横無尽に往き来し、「生きること」「つくること」の根源的意味を問い続けます。

インゴルドが提唱しているほどの大儀ではありませんが、私自身 現代美術に関わりながら、絵画・彫刻・版画・写真・映像・パフォーマンス・舞台・音楽・伝統工芸・建築・ファッション・家具 等々がそれぞれのLINEを越境し「互いに高め合う」ことを理想として参りました。今から12年前、築約100年の料亭が 建築家 吉川弥志氏の手により現代美術画廊 eN artsに生まれかわりました。古い日本建築の良さを残しながら現代美術を発表することができる懐の深い建築物と今を生きるアーティストたちの最新作・・・両者が織りなす「線」の交わりあいが 私の理想とするところに少しでも近づければという願いを持って本展を企画致しました。 是非 御高覧下さい。

Naomi Rowe | eN arts

出展作家のご紹介:
Lee Edwards (リー・エドワーズ):ロンドン在住。鉛筆で線を「draw (引く)」ことによりモチーフの立体性、素材感、風合いに至るまで表現します。本展の為に制作した線描画を出展します。

西村涼:ドライポイントで、線を「彫る」ことにより様々な事象を作品化しています。版画の世界では、かつて見たことのない独自の世界観を表現する版画家です。本展では最新作を発表します。

白子勝之:木や板から線を「削り出し」漆や顔料という日本的な素材を施すことにより独特の彫刻作品を創作。本展には最新作で臨みます。

*Press Release

各作家のプロフィールや作品の詳細やアーティストステートメントは以下をご参照下さい。

リー・エドワーズ
lee「Ball」(部分) | 2019 | H297 x W210 mm | Graphite on Paper © Lee Edwards

既存の文脈からもぎとられ、背景からは切り離され、所有者からも隔離された「もの」は各々の言語で実在する。

それら「もの」への自己投入は作品内に明白に表われている。着衣、性、失望―いずれも時空自在にして実にありふれたものである。しかし、執拗なまでの緻密な観察により、私の作品は個人の本質的側面をその「もの」に投影し直接的に表現しているのだ。

Lee Edwards

*リー・エドワーズ CV

西村 涼
nishimura1「Floating 6」(部分) | 2018 | H762 x W1,066 mm | 銅版画インク、シリウス紙 © ryo nishimura

土手の上から川を眺めると、次から次へと水が流れて行くのが見える。あたかも、自分も時間の流れの中、“今”という1つの点に立っているように、ふと思ってしまうことがある。

記録という役割のみで考えると、写真というものは、時間軸上の流れを静止画として切り抜くものである。その静止画を無数に繋ぎ合わせ、更に始点と終点を与えることで、流れの一部を保存することを可能とする、それが映像ということになる。同じように、人が動作や現象を見る時も、時間軸上の1点で流れを切り取り、静止画として捉えてしまっている。つい、そう思ってしまう。

しかし、写真や映像と同じように、人は流れの一部を切り抜き、保存しているだろうか。いや、そうではない。人が生きる中での“今”という地点からは、時間の流れをそのように捉える事は出来ない。それは、人もまた川の水や時間と一緒に“流れ”ているからに他ならない。

流れる川の動きは、しばしば生命の比喩として用いられる。哲学者、アンリ・ベルクソンは『創造的進化』*1において「生物は何はともあれ、1つの通路である」と述べている。生物の一世代は源泉(祖先)から出でて、海(子孫)へ流れ下っていくと言えよう。その始点から終点までの流れは、世代を超えた生命の生と死の過程の一部にすぎない。源泉から湧き出るまでには土中を流れてきたのであって、海に出てからも果てしなく流れは広がっていくのだ。このように始点と終点がない軸(線)に沿って生物は“流れ”ている。

私は主に銅版画のドライポイントという技法を用いながら、立ち上る煙や、水に溶けていくインクといった常に形が変化し続けるものを通して、自然物の流動性を線画として刻み込んでいる。そして私にとってそれらの線は持続する運動、或いは永続的な流れの軌跡を留めるものである。それらの“線”を通して、生命の流動性や時間の永続性、連続的に創造される“今”を改めて問い直している。

西村 涼

*1 『創造的進化』(真方敬道訳 岩波文庫 1979年) 引用に際して一部語句の変更

*西村 涼 CV

 

白子 勝之
shirako1「untitled」| 2019 | H220 x W43 x D52 mm | 漆、染料、MDF © katsuyuki shirako photo_takeru koroda

 作品は特定の意味を有さず、複数のイメージを内包しながらただそこに在るだけである。

白子勝之

*白子 勝之 CV

-出展作品-

-展示風景-