showcase #4 – つくりもの Constructs –
中島 大輔 山崎 雄策
2015年5月8日(金) – 5月31日(日)
会期中 金・土・日 12:00 – 18:00 開廊
オープニングレセプション : 5月8日(金) 18:00 – 20:00
アポイントメント 承ります
・
eN arts では、清水穣氏のキュレーションによります、写真に特化したグループ展 “showcase #4 – つくりもの Construcs-”を開催いたします。展覧会のタイトルが示す通り、現代若手写真家の「ショーケース」となるこの展覧会は2012年からスタートし、今回でシリーズ四回目となります。
“showcase #4”のテーマは「つくりもの Constructs」です。自然派と技巧派、二つの個性が織りなす「つくりもの」の世界を是非ご高覧ください。
ロウ 直美 | eN arts
→過去のshowcase展はこちらからご覧いただけます。
・
2015 showcase #4 curated by Minoru Shimizu
現代日本の「肖像」を「ドキュメント」する作家を取り上げた、去年の「showcase#3」とは対照的に、第4回を迎えた「showcase」のテーマは「つくりものconstruct」です。
かつて「constructed photography」というジャンルが、それまでのリアリズム写真に対抗する写真のありかたとして登場しましたが、そこでは当然、ピクトリアルかストレートか、フェイクかリアルかという二元論が前提とされ、さらに「対抗」というかたちで実は相変わらず「ストレート」「リアル」という二つの項の有効性が信じられていました。
本展は、むしろすべての写真は、フレームで切り取った世界の断片であるというそれだけで、すでに「つくられた写真constructed photography」であるしかなく、そのうちのある種の「construct」が「リアル」「ストレート」、また別のタイプの「construct」は「ピクトリアル」「フェイク」として受容されてきたと考えます。つまり、写真を撮るとは自動的に写真を「construct」する行為に他ならず、そこには写真を「つくる」だけでなく、写真の見方を「つくる」行為も含まれます。
中島大輔(b.1983)は、2007年「写真新世紀」準グランプリ受賞で注目され、2008年ヴィジュアルアーツフォトアワード大賞受賞、同年『each other』(青幻舎)でデビューしました。突き放したクールな構成、フレームによって対象を分断し連結するそのセンスは天性のものと言えるでしょう。中島作品とは、フレーミングと被写体や光の選択によって、すなわち、一切の画像加工を施すことなく成立する「construct」なのです。
山崎雄策(b.1984)は、2013年「写真新世紀」佳作(清水穣選)、同年第10回「写真1-Wall」奨励賞(土田ヒロミ選)、2014年「写真新世紀」優秀賞受賞と、現在注目を集めている写真家です。巧みに作り込まれた作品群、すなわち、画像加工をそれと気づかれぬほどに駆使したその作品は、写真を見る人が何気なく前提としている見方を、さまざまな仕方で転倒します。そうして写真自体からも、それを見る行為からも、自明性を蒸発させるのです。
写真を撮り、写真を見る、そのさまざまな前提を、ユーモラスに、さりげなく揺るがせるような写真を、言わば自然派と技巧派の二つの才能はどのように「つくる」のでしょうか。
2015年4月 清水 穣
・
中島 大輔 | Daisuke Nakashima
私にとって、撮影したイメージを他者に提示する行為は、私がフレーミングしたイメージの外側、つまり「見えない」「写らない」側面を意識させる行為でありたいと考えています。
見るということに対して、ステレオタイプな認識から紐解かれ、カテゴライズや特定化から解放された、知覚がたゆたう状態を体験出来る作品を制作したいと思っています。
・
山崎 雄策 | Yusaku Yamazaki
ここに写されている女性達はすべて実在しません。
これらはストリートスナップで撮りためられた数十万枚の通行人の写真をベースに、画像処理によって作られた架空の女性達です。同一人物に見える写真もそれぞれ微妙な差異を持たせて作られており、オリジナルの顔は発表していません。私は実在と不在の間をさまようこの女性達に、20〜30代の日本人女性にもっとも多い苗字と名前を組み合あわせて(佐藤 愛)と名付けました。
私たちは普段「顔を見る」という行為を無意識に処理しています。人間の脳の中には顔を認識する為だけの領域が存在して「この人は安全だろうか」「この人を見た事があるだろうか」…などを瞬時に判断しているのです。私は連続して変化していく「誰のものでもない顔」を作りこの顔領域を揺さぶろうと試みました。
また同時に試みたのは、既視感を生じさせながらそれを裏切り知覚を揺さぶる方法です。これまで多くの先人が通行人をとらえたストリートスナップを発表してきました。私はその文化や作法を下敷きに、違和感を覚えた瞬間にどこにも着地できなくなってしまうような装置を作ろうと考えました。
そして「他人の顔」を扱う以上プライバシーの問題とは切り離せません。ストリートスナップを発表する事のモラルが問われている昨今に「誰のものでもない顔」を発表する事がどのような意味を持つのかに関心を持っています。
・
-出展作品-
-展示風景-