eN arts

識閾にふれる

田中真吾個展

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識閾にふれる
田中真吾 個展

2011年9月2日(金) – 2011年9月30日(金)
会期中 金・土・日 12:00 – 18:00 開廊
オープニングレセプション : 9月3日(土) 18:00 – 20:00
アポイントメント  承ります

作業場の明かりを消し、暗闇の中で火を燈す。
生まれたばかりの火は、山の稜線を照らす朝日のように、細く静かに紙の輪郭を燃やしてゆく。
自身の手も視認出来ない闇の中、じっとその光と対峙していると、自分の存在すらも消えて、まるで世界にはそれしかないように思えてくる。
そして時間は普段の速度を失くし、止まっているのかと錯覚するほどゆっくりと流れていく。

幻想的という言葉を当てるには、あまりに素朴な光だと思う。
きっと何者でもないのだろう。
形容した瞬間、言葉に負けてしまう気がする。

輪郭をつたう光、わずかに照らし出される空間の陰影。
その光景を、私はただ見ている。
か細く揺れる光の筋から目が離せないでいる。

そして最後の瞬きが消え、全てが闇に還った後、
蛍光灯のスイッチを入れると、時間はいつもの速度を取り戻し始める。

田中 真吾

田中真吾の作品は一貫して「火」がテーマであり、その「火」を使っての制作は常に進化し続けています。数多くのアーティストにとって興味深く、表現対象となってきた「火」ですが、田中真吾が表現する作品は唯一無二。鑑賞者の記憶に深く残ります。
田中の作品群は「LIGHT」「TRACE」「TRANS」「HEAT」の4つのシリーズに分かれています。

ST-PH-08-003
LIGHT: 2009 年 eN arts での個展「夢と現」において発表された、炎 を表現するモノクローム写真シリーズ「LIGHT」は、筋状に「燃え始め」、「燃え上がり」やがて「燃え尽きてゆく」炎の姿を撮影した作品です。金属上に実在する炎が、その金属に映り込んだ仮の炎と一体として表現されています。真と偽の炎が境なく一枚の写真に共存する様は、この世における無常観を比喩しているかのようです。

ST-PH-11-004
TRACE: 本展「識閾にふれる」では 炎 をカラー写真で表現する最新シリーズTRACE を発表します。作品は、宝石のように美しくありながら、炎が醸し出す恐怖感をも包含しています。重なり合う時空間でおきた燃焼現象を写真に収めたこれら新作群においては、四方八方に燃え盛る炎が、写真という平面空間に詰め込まれたかのように、幾重にも重なりあうイメージとして表現されています。圧倒的な炎の威力、そしてその炎が存在する時間や空間までをも感じさせる力作です。

ST-SC-11-001
TRANS: 紙と木、というシンプルきわまりないメディアによる造形作品であるにも関わらずダイナミックなオーラを放つ立体作品のシリーズがTRANS です。紙と木のパネルを用いて制作される躯体の造形と、紙が燃焼する際にしぜんと形成される造形とが、相乗効果を得ています。TRANS はLIGHT やTRACE シリーズの写真作品とは対称的に、炎の時間や動きをフリーズし、閉じ込めてしまった作品であるかのようにうかがえます。しかし作品完成後は、灰という物質に変化してしまった紙の特性により作品自体が変化し続け、鑑賞者に儚さや無情を喚起させる作品群です。

ST-SC-11-013
HEAT: 「焼く」という作為と「紙+漆喰+木のパネル+炎の加熱」による物質の化学変化の結果が作品に繋がるHEAT シリーズ。日本の伝統的な漆喰壁と同様な構造をもつパネルに無作為に紙を乗せバーナーで焼いていく…単純な制作過程のように思われがちですが、燃焼時間、気温、湿度、炎の強さetc. 諸条件により各作品は複雑多岐な表情を見せます。あらわれくる色、質感、モチーフは鑑賞者の経験や感情に呼応するだけではなく、さらに派生し各人の想像力をかき立てるものへと発展してゆきます。

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