SHOWCASE #1 curated by minoru shimizu
2012年4月6日(金) – 4月29日(日)
会期中 金・土・日 12:00 – 18:00
オープニングレセプション : 4月6日(金) 18:00 – 20:00
アポイントメント 承ります
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鋭い切り口とロジカルな分析により現代美術を論じ続ける清水穣氏が独自の審美眼をもって選んだ30 歳以下の注目の新鋭若手作家四名 加納俊輔、佐藤華連、武田陽介、中島大輔によるグループ展を開催いたします。
各作家渾身の作品群から清水穣氏とeN arts が選出した作品を御高覧の上、写真の新時代を創世する若き才能を御堪能下さい。
ロウ 直美 | eN arts
→過去のshowcase展はこちらからご覧いただけます。
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SHOWCASE #1 ネオ・コンポラ — cool & critical
「コンポラ」とは、1966 年から69 年にかけて、ジョージ・イーストマンハウスで開催された展覧会「Contemporary Photographers」の和製略称である。とくにその第1 回 「Toward a Social Landscape」展の写真集は同時期の日本写真に影響を及ぼし、さりげない日常風景を横位置で撮るスタイルの写真が多く現れた。柳沢信(『都市の軌跡』79 年、撮影時期は64〜70 年)や牛腸茂雄(『日々』71 年、『SELF AND OTHERS』77 年)に代表される70 年代の写真家たちの作品が総称的に「コンポラ写真」と呼ばれ、それは日本のポストモダン写真の第一世代であった。
「コンポラ写真」は、「リアルな世界」の活写を目指すモダニストの写真(リアリズム、ドキュメンタリー)に対して批評的な距離をもつ、クールな写真であった。熱く「リアル」な写真を撮る代わりに、彼らは、どういう写真を撮れば人は「リアル」と認識するのか、「リアル」こそが商品として流通するマスメディア社会において写真に何が可能かと問いながら写真を撮った。しかし、日本の写真界は彼らのスタンスを理解するには未熟であったし、牛腸茂雄の夭折もあり「コンポラ」は途絶えた系譜となった。
ここに集められたアンダー30 の作家たちは、ちょうど社会のデジタル化と共に成長した世代である。写真を「撮る」「見る」ことに対して批評的な距離を取りつつ、クールな作品を作り出す点が共通している。デジタル世代の醒めた現実感覚が、中断された「コンポラ」という系譜を隔世遺伝的に継いでいるように見えるので「ネオ・コンポラ」と名付けた。それは<表象> vs <裸の現実>、<ピクトリアル> vs <ストレート>というような安易な二元論を許さないネットワーク化した社会において、デジタル写真の可能性を探る多彩な表現なのである。
加納俊輔(b.1983)は、2011 年「写真新世紀」佳作受賞。身近なイメージを意外なところで連結し、意外なところから対応関係を切り出してくるセンスが小気味よい。出来すぎた偶然、赤裸々な嘘の写真など、物体からピクセルデータまでの範囲で「イメージを見る」ことへの多彩で批評的アプローチが持ち味。
佐藤華連(b.1983)は2010 年「写真新世紀」グランプリ受賞。人ではなくて、人のいた気配、人の通った跡を、一つ一つ拾い上げたその写真のなかで、世界は独特の色彩と質感を帯びた痕跡として立ち現れる。
武田陽介(b.1982)は2007、2008 年と連続して「写真新世紀」佳作受賞。ジェフ・ウォールの「near documentary」あたりが出発点で、「ピクトリアル」「リアル」「シュール」「ナチュラル」な写真を一ひねりしたユーモラスな写真群は、しかし意外にも、ほぼすべて足で撮りためたストレートフォトである。
中島大輔(b.1983)は2007 年「写真新世紀」準グランプリ受賞で注目され、2008 年ヴィジュアルアーツフォトアワード大賞受賞。同年『each other』(青幻舎)でデビューした。突き放したクールな構成、フレームによって対象を分断し連結するそのセンスは天性のもの。フレーミングと繊細なセクシュアリティを連動させることの出来る数少ない作家の一人でもある。
2012 年4 月清水 穣
清水 穣
写真評論家、同志社大学教授。1995 年頃よりBT 美術手帖、Art It といった媒体や写真集、美術館カタログに批評を掲載。2010 年からキャノン写真新世紀審査員。主な著作に『白と黒で:写真と・・』『写真と日々』『日々是写真』『プルラモン』(現代思潮新社、2004、2006、2009、2011年)がある。森山大道、Wolfgang Tillmans、松江泰治、柴田敏雄、吉永マサユキといった写真家の写真集に寄稿している。
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-出展作品-
-展示風景-